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崖錐斜面はあちこちにありますが、意外と観察できないのが崖錐の断面です。
北海道の大雪山にある層雲峡は、石狩川が第四系の溶結凝灰岩を刻んで出来た峡谷で、photo1、photo2に示すように崖錐地形の宝庫です。
層雲峡の中でも、層雲峡温泉郷の真向いに崖錐の断面を観察できるphoto3の崖錐斜面があります。崖錐斜面に刻まれたなだれ道から常に土砂が出ているため地肌が露出しています。
*中腹あたりには大転石を含む乱雑な崖錐堆積物が観察できます。
*斜面下部は粘板岩が露岩していて、崖錐堆積物が全然被っていないのがわかります。
*岩盤線の傾斜は斜面尻で急傾斜、中腹で緩く頂部で溶結凝灰岩の岩塔が直立しているのがわかります。
岩塔背後は台地になっています。
層雲峡が出来る前の地形は、約3万年前に大雪山の噴火(御鉢平カルデラというのが大雪山の真ん中にあってそのカルデラからの噴火です)によって溶結凝灰岩が流下して出来た台地です。岩塔のてっぺんが先ほどのべた通り昔の台地の高さです。この台地を石狩川が3万年かけて刻んだ結果できた地形ですから、新しくて形成過程も単純な地形です(ただし、この溶結凝灰岩が噴出した時にもすでに同じような規模の峡谷があって、その峡谷を埋めるように溶結凝灰岩が堆積したことがわかっています)。
ですので、崖錐斜面形成のメカニズムを理論的に解明しやすいケースかも知れませんが、石狩川の流路のシフトの影響、上部が溶結凝灰岩で下部が粘板岩という地質条件の影響もあるので難しいのかもしれません。
崖錐斜面を含む斜面発達を説明する理論的モデルには、減傾斜後退モデル、平行後退モデルおよび斜面交代モデルがあってまだまだ議論がつづいているし、実際の斜面ではこれらが組み合わさっていると考えた方がよいようですし、斜面発達の問題は複雑だと教科書にもかいてあります。常識的には岩盤のような硬い地盤では直崖がしばしばみられることから平行後退が卓越し、土砂等の軟らかい地盤では減傾斜後退が卓越するように思います。
photo3の崖錐斜面は典型的な崖錐地形が形成された後、脚部が石狩川のシフトで新たに削剥されたように見えます。
写真は2008年8月から10月撮影
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photo3:層雲峡温泉郷向かいの崖錐の断面が観察できる斜面 |
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photo11:photo10の拡大、巨大な転石を含む乱雑な崖錐堆積物が見えます。 |
photo12:photo10の拡大、ネットの格子状のワイヤーは普通縦5m×横2m。 |